自動運転の「倫理」を考える

自動運転倫理ガイドライン研究会は、学際的なメンバーで、自動運転の倫理を検討し、提言を行います

2022年6月17日 第1公開シンポジウム開催

1067名の方のお申し込みをいただきました。
ありがとうございます。

ガイドライン案を公開中!

本研究会の研究対象

安全性

社会的受容性

自動運転に携わる者の義務

ジレンマ状況への対処

データの取り扱い

指針案

なぜ自動運転の「倫理」を扱うのか

理由 1 多層化されたステークホルダーの存在

運転手、所有者、製造者、自治体、事業主、行政機関、運行事業者、遠隔監視者、現場措置業務実施者、車両の認証を行う機関、車両の販売・広報に関する基準を策定する機関、交通参加者として、歩行者、地域住民など、常生活に新たな交通技術である「自動運転」が持ち込まれることについて、ほぼ全ての人が関係することになります。それぞれの「倫理」的な価値観のすり合わせが必須です。

理由 2 行政のガイドラインは縦割りで不十分

実証実験に関わるガイドラインを除き、現在国内に存するのは、技術的視点に特化した安全保安基準等のガイドラインのみでありまして、たとえば、自動運転による事故が発生した場合に、プログラマー、メーカー、ディーラー、乗務員それぞれについて刑事責任をどのように認定するかが定まっていません。さらには、運転者の生命、又は歩行者等の生命を、別の歩行者の生命を侵害することによってのみ回避可能な状況(=ジレンマ状況)等の倫理問題について事前にプログラミングをする際の方向性の基準も存しないことも問題である。ジレンマ状況の場合に、誰が責任を負うのか、又は、責任を負わないとすればその法的構成はどのようなものか、が不明確です。

理由 3 「トロッコ問題」だけ解決さればよいのか?

トロッコ問題などのフレーズでどこかで検討したり、考える機会はあったかと思います。しかし、このようなジレンマ以前に、そもそも、「人命への配慮」について、大前提となる人命には、歩行者、対向車、交通違反者、どこまで含むのか、また、メーカーは、安全をどこまで希求すべきなのか合理的に予見される防止可能な事故が生じないという要求を少し超えればそれでよいのか、自動運転の導入が許される社会的受容性とは何か等、産官学民すべてのステークホルダーが直面する問題の根底には、「倫理」が存在します。

ご挨拶

そこで、本研究会は、10名の学際的なメンバー、刑事法学、民事法学、哲学、生命倫理学、法哲学、元検事(弁護士)、機械工学、交通工学、電気工学(メーカー)、電子工学(メーカー、を集め、ディスカッションを重ねて、共通言語・共通理解を見出し、自動運転の社会実装において必要な11の指針の案および注釈を策定しました。本指針は、自動運転車を対象とするものであり、自動運転に携わる者全てが取り組むべき態度の方向性を既存の法律・指針の枠組みを超えて示すものです。

我々人間の世界は、最初の車であれ、電車であれ、航空機であれ、新しいモビリティが社会に導入されるときはメリットデメリット、コストベネフィットなどで測られ、壮烈な批判を受けたり、あるいは批判を押し切って導入したり、様々な軋轢を生んできました。高齢化およびドライバー不足が進み、交通不便地域が増加するなかで、人々の足となりうる自動運転を礼賛するだけにとどまるとか、不安定な技術による新たな事故類型が想定されることを理由に盲目的に導入に反対するとか、様々な立場があろうかと思います。
 本研究会は、自動運転と倫理について深く議論した結果を報告することで、より、社会実装についてのディスカッションあるいは地域との合意ないし社会的受容性の醸成などが建設的になるように、方向性を示すものであります。 本会が作成しましたガイドライン案は本HPからダウンロード頂けます。
 交わることのなかった学問同志、産業同士、そして消費者および官公庁が、同じ目線で自動運転とどう向き合うかを考えていただけるようになれば、本会としては誠に幸甚でございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

樋笠尭士

研究会メンバー